研修のあぜ道(2)エラそうな受講生、謙虚な受講生

研修会場には、様々な受講生がいます。
好きで、受けに来ているわけでないのであれば、機嫌がよろしくないのは
分かりますが、それを顔や態度に出し過ぎだぜという方はたまにいます。

まだ講師業駆け出しの頃でしたか
グループワークの案内をして、さぁ、どうぞと会場を巡回していたら、
「あのぉ、こんなのやって意味あるんすか?」と言われたことがありました。

ようやく役付きになりだした中堅クラスの方。
「やる気ないんやったら、帰れ、ボケー!」と、一瞬、ミサイル発射しかけましたが、
そんなことしたら、パワハラ講師即認定。逆に、こちらの退場は自明の理。

「その意味をこれから確認していきましょう」とにこやかに返しながら、
その場は進行です。
(ちなみに、この方、研修が進んでいくにつれ、「結構、面白いね」なんて言いながら
ノリノリでやってくれましたので、私はあとで、「短気は損気」の言葉をしみじみと
噛み締めることとなりました。危なかった…ふうっ)

ここまであからさまに態度や、言動に出さなくても、「こんなの知ってるよ」の空気を
発しながら、嫌々ビームを出してくださる受講生の方は存在します。

こういう方々を研修という学びの旅にどうやって連れ出すことができるか。
プロ講師の手腕が問われるところです。

エラそうにするタイプも存在しますが、こちらが恐縮するぐらいの謙虚な方もおられます。

それは主に、管理職研修でお見受けします。
転職されている方の中には、結構、「能ある鷹は爪隠す」タイプの方がいるのです。
こういう方々は、決して、自分からキャリアをひけらかしません。出しゃばりません。
エラそぶりません。人の話もよく聞かれます。グループワークがスムーズに進むように、
最大限の配慮をしてくれます。

私が過去一番、驚いた方、
とあるメーカーさんでの管理職研修。年は50代半ばか、でも若く見えます。
出しゃばらず、かと言って無口でもなく、グループに溶け込んで、受講されています。

休憩時に事務局さんに聞いて驚きました。

「〇〇さんて、艦長さんだったんですよ」
「えっ!」

なんとその方は、元海上自衛隊の護衛艦の艦長さん。階級で言えば、2等海佐か1等海佐。
上級幹部ですよ。かつては、部下百人かそこらに生死に関わるような命令を出していた方です。

こういう方相手に、さきほどまで「リーダーシップ」を論じていた自分… じんわり変な汗が出ました。
次の休憩時間に、この方に、私のほうから話しかけてみました。

「分かり切ったことばかりのお話で恐縮です」と私。
元艦長にっこりと「いえいえ。勉強になります。今日はよろしくお願いします」と。

今、与えられた役割を実直に果たす。昔のプライドが邪魔してなかなかできませんよ。
艦長ではなく、途中入社された、その会社さんの管理職である〇〇長に徹しておられました。
お見事でした。

いろんな人に出会えて、勉強させてもらえる講師業です。