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◆ VOL 1
◆ 発行日 2003・10・31.
◆ 発行人 門脇竜一
◆ 隔週刊 隔週金曜日発行(臨時増刊あり)
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ケース 1 絶体絶命!訴訟寸前の多重クレーム その1
「自動車販売会社ビギナー 浅田俊介の戦い」
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クレームの電話と言うのは、すぐ分かる。「この間、納めてもらった車な
んだけど・・・」こういう切り出しは、ほぼ間違いなくクレームの報せだ。
この仕事に就いて、半年。浅田俊介にもようやくその勘所が分かって来た
ところであった。
それにしても、その電話はいつもと勝手が違っていた・・・。
「あぁっ、浅田さんね!」
「はい、そうですが」
「飯田です!」
浅田の胸に嫌な予感が走った。(3日前に納車したお客であった)
納車後すぐの電話にろくなことはないというのが、この半年の浅田の経験
則だったのである。案の定・・・。
「あなたねぇ〜、私を殺すつもり!」
(やっぱり!)
浅田の予感はズバリ的中していた!
飯田というお客は中年の女性のお客であった。商談時から、細かいことに
厳しく、浅田には手ごわいお客だったのであるが、お客自身が欲しかった
車種であったこともあり、浅田のやや押しの弱いセールスでも受注に結び
つけることができたのであった。
機嫌よく新車を乗ってもらっているかと思いきや、激怒タッチの電話で
あった。
「あのう・・・どうされましたか」
「どうされたじゃないわよ。あなた、ブレーキ踏むと変な音がするじゃない
の。効きが悪いわよ。これって、欠陥車じゃないの」
「いえ、そんなことは絶対ありません」
浅田はクラクラしてしまった。
ここから、この電話は延々と、30分も続いた。お客は、ただただ
ひたすら、自分がこの車に乗っていて、どんなに怖い目に逢ったかを
しゃべり続けた。クレームの機銃掃射であった。
「あなたねぇ!さっきから、はぁとか、そうですかしか言わないけど、
どうしてくれる気なの?」
電話口の向こうからの声のトーンがもう1オクターブ上がり、さらに
金切りボイスになった。クレームのバズーカ砲だ!
(こりゃ、大変なことになりそうだ・・・)
浅田は憂鬱な気持ちに襲われた。これでこれからのスケジュールが、また
大狂いだ。
明日も納車やら、展示車の搬送で走り回らないといけないのだ。
めまいがする。
「すぐに、会社として、責任ある回答をしてちょうだいね!わたしはもう
この車には乗らないから」
ピシャリと言われて、浅田は再び、途方にくれた。
もう炎上大破である・・・。
援軍も呼ぼうにも、あいにく営業所には誰もいなかった。
まだまだ営業ビギナーの浅田には荷の重いトラブルの発生であった。
(つづく)
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◆ VOL 2
◆ 発行日 2003・11・14
◆ 発行人 オフィス クリアマイン 門脇竜一
◆ 隔週刊 隔週金曜日発行(臨時増刊あり)
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エピソード 1
絶体絶命!訴訟寸前の多重クレーム その2
「自動車販売会社ビギナー 浅田俊介の戦い」
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次の日から浅田俊介の地獄が始まった。
「乗ってみてよ!あの車。とんでもないわよ」
電話を受けた翌日、すぐにお客宅を訪問した浅田に、いきなり浴びせ
られた手榴弾であった。単独訪問の浅田はその全てを、自分が受け取るしか
なかった。
「浅田くん、まずは君が行ってみてだな・・・」
思いがけない営業所長の言葉であった。折から月末近く、業績不振の中、
営業所長の顔色は土気色で冴えない限り。とはいえ、援軍なしで、一人で行く
というのも浅田にはなんとも気の重い話しであった。こういったとき、
気の利いた頼りになる中間管理職でもいればいいのだが、浅田の会社は、
主任や係長という肩書きの社員はいるにはいるのだが、あくまでも一匹狼の
集まりで、後輩のめんどうをみるという雰囲気ではなかった。
「クレームかぁ、まぁ、命まではとられんよ。どんと行って来いや!」
こんなことを言ってくれる古参の係長もいたが、浅田には何の励ましにも
ならなかった。
(ここは学校ではない・・・オレ、一人ぽっちだよ)
浅田は入社以来、悲嘆にくれっ放しであった。誰も教えてくれない・・・。
やり方の分からない仕事が雨あられと降りかかるばかり。孤独感に苛まれる
浅田であった。
「あのう・・・すいません。ご迷惑かけまして・・・」
「ご迷惑もいいところよ。それより、いつ交換してくれるの?」
ようやく、お詫びの言葉を発した浅田を待っていたのは、お客からの、
またまたの驚愕の一言だった。
「いや、交換というわけにはいきませんので、修理となります」
新車交換なんておいそれとはできないのであった。浅田はお客のあまりの
ハードパンチぶりに、心臓が破裂しそうであった。もう、どうしたらよいか
分からないのである。
ただ、はっきりしているのは、安易に新車交換を引き受けると所長に爆雷を
落とされることであった。
「あなたねぇ、買って間もないのよ。何が修理なのよ。ぼけたこと言ってん
じゃないわよ。モノがおかしかったら、交換じゃない。何、言ってるのよ。
悪徳商売だわね」
「いや、私どもは決してそんなことでは・・・」
さらにお客から言い返されて、しどろもどろの浅田であった。
ともあれ、必死に何とか、かんとか頼み込んで、一度だけはと営業所に車を
持ち帰らせてはもらったのであった。
車を引き上げて来て、疲れ果てていた浅田に、所長はこう言ってくれた。
「本社のサービス部の大田係長に相談したらいいよ」
(おおた・・・鬼の大田・・・)
浅田は、またまためまいがして来た。
その厳しさ、怖さから鬼の大田の異名を持つメカニックマン。
泣かされた営業マンが何人もいると聞いていた。管理職連中も怖がっている
という噂であった。
「所長から大田係長にお願いしてくれませんか・・・」
「何、言ってんだい。まずは自分でやらなきゃ」
意を決して言ったのに、さらっと所長にはかわされてしまった。
もう、自分で連絡するしかなかった。
大田は、関西出身とかで、ここ関東の言葉と明らかに違う。それが、さらに
大田のイメージをさらに強烈にデフォルメしていたのであった。関西弁の
怖い奴である。
う〜ん・・・仕方ない!
浅田は清水の舞台からジャンピングのつもりで、電話をした。クレームの
火は早くに消さないといけないのだ。ぐずぐずしてられない。
「あの、南田村営業所の浅田ですが、サービスの大田係長ですか」
「なんや!」(来たっ・・・こわ〜っ)
噂通り、低ーいトーンで迫力満点であった。
「あのう、診てもらいたい車があるのですが」
「オレは診たくないぞ!」(これだよ〜っ)
「ブレーキ時に変な音がするんです」
「どんな音や。他に気になることはなかったか。現象の起きるタイミングで
特定できることはあるんか?状態を正確に言え」
大田の質問は矢継ぎ早であった。
対して、浅田は何一つ答えられない。
「おい、浅田!」
静かに語気が上がった。
「お前、自分でじっくり乗って確かめたか?お客さんの気持ち分かったか?」
「いえ、そこまでは・・・」
「ドあほう!お前、真剣に仕事せんかぁ。今から、こっち来い」
「いや、今日は他の予定もありまして・・・」
どなられて、放心状態になってしまった浅田が我を取り戻して、電話に
答えたときには、もう電話は切れていた。
営業所の中の自分の身の周りを見渡すと、(こいつ、やられたな)と言わん
ばかりのにんまりした先輩の顔が並んでいた。
(大丈夫かな・・・オレ・・・)
またまた心細くなった浅田であった。
(つづく)
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【 小さなあと書きのコーナー 】
連載第2号お読みいただき、ありがとうございます(^^)。
発行するのに必死?で、素っ気無い創刊号ですいませんでした。
今後はこんなミニコラムも掲載いたします。
今回ケースのビジネス軍曹は、鬼のサービス係長です。
えらい怖そうな方?
ビギナー浅田くんは、誰にも助けられず、もうキリモミ爆発寸前状態です。
果たして、浅田くんの運命やいかに。
このクレームはまだまだ燃えさかる!?
次回もご期待ください。みなさまのお仕事のお役に少しなりとでも立ちま
すように。
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◆ VOL 3
◆ 発行日 2003・11・28
◆ 発行人 オフィス クリアマイン 門脇竜一
◆ 隔週刊 隔週金曜日発行(臨時増刊あり)
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エピソード 1
絶体絶命!訴訟寸前の多重クレーム その3
「自動車販売会社ビギナー 浅田俊介の戦い」
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「はぁ〜っ・・・」
深い、深いため息とともに大田との電話を切った浅田であった。
「どうだい?軍曹にしぼられたかい?」
「先輩、大田係長のことよく知っているんですか?」
「うん・・・きついよな、あの人は」
「やっぱり!」
営業所の2年先輩社員も大田のことはよく知っているようだった。
でも、先輩の次の一言は浅田にはよく分からないものであった。
「でも、あの人が一番うちの会社で優しいのかも知れないな」
「優しいですか?軍曹なんて呼ばれるあの人が?」
「まっ、そのうち分かるサ」
そう言われても、先輩の言葉をすぐには信じられない浅田であった。
さて、件のクレーム車両である。
大田によって、早速修理の手がかけられた。浅田は大田に車を預けて、
すぐに退散と思っていたのだが、そうは問屋が卸さなかった。
「浅田、一緒に来い!」
こう言われて、一緒に車に乗り込んで、テスト走行に加わることに
なった浅田であった。
「おい、浅田、オレは売るのが仕事で、修理は仕事じゃないと
思ってるだろ」
ハンドルを握る大田からふいにこう尋ねられた。浅田は咄嗟のことで
びっくりしてしまった。(図星であった!)
「いや、お客さまのことを第一に考えるのが営業マンの務めで・・・」
答える声が、かすかに震えていた。
「ホントにそう思っているか?」
大田の声は低いがよく響く。
「いや、実は・・・」
答えかける浅田の横顔をチラッと一瞥しながら、大田はニヤリと笑った。
「日頃は台数目標に追いかけられているもんな。
そんな余裕はないと思うわ。でもな、お客さまの気持ちというものほど
大事なものはないんやで」
岩に染み入るような大田の語り口に浅田は、新鮮な気持ちで驚いていた。
この人は、本当に巷で言われているガミガミ鬼軍曹なのだろうか。
不思議な気持ちが起こっていた。
「お前ら、若手が大事なことを掴む前に、台数、台数と売れさえすれば
あとは知らん型の営業マンにどんどんなって行くのが、オレは気になって
仕方がない」
浅田は黙って聞いている・・・。
キュルキュルキュる〜 突然、変な車から変な音がした。
話しをしていた大田の口の動きが止まった。一転して、険しい顔である。
「大田係長、どうかしたんですか?」
尋常でない様子に浅田は急に不安になって来た。
「ブレーキがきかんぞ。この車・・・」
「えっ!?・・・」
ギアチェンジをしながら、減速操作をしている大田であったが、
顔はますます険しくなっているような気がした。
ふと、前方に目を凝らして、浅田はびっくり仰天してしまった。
「係長、赤です。かかりちょう〜、前の信号、赤です。
あか、あか・・・!!」
二人を乗せた車は、前途に何の迷いもないように先を急いで進んでいた。
信号まであと300mぐらいだろうか。
前方の赤色が、刻一刻と自分の眼球に刺さりそうになるのを感じる
浅田であった。
(つづく)
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【 小さなあと書きのコーナー 】
おやおや、ビギナー浅田くんに苦難がまだまだ続きます。
次回の浅田くんの運命やいかに?大田軍曹はどうする?
最近は、こんな大田軍曹のようにしつこい指導をする先輩、
上司が少なくなっているとよく聞きます。上の立場の人も、自分の仕事に
忙しすぎて、指導する時間もなく・・・といったこともあるかも
知れません。下が育たないと、いつまで経っても、自分の仕事レベルが
上がらないのも確か。
人材育成なくして進歩なしです。
自分の仕事は山積でも、人材育成には、決して手を抜かない大田軍曹に
注目ください。
それでは、また次回に♪ みなさまのお仕事のお役に立てますように。
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◆ VOL 4
◆ 発行日 2003・12・12
◆ 発行人 オフィス クリアマイン 門脇竜一
◆ 隔週刊 隔週金曜日発行(臨時増刊あり)
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エピソード 1
絶体絶命!訴訟寸前の多重クレーム その4
「自動車販売会社ビギナー 浅田俊介の戦い」
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「係長、赤です。かかりちょう〜、前の信号、赤です。
あか、あか・・・!!」
二人を乗せた車は、前途に何の迷いもないように先を急いで進んでいた。
信号まであと300mぐらいだろうか。
前方の赤色が、刻一刻と自分の眼球に刺さりそうになるのを感じる
浅田であった。
(あぁ、もうだめだ・・・)浅田はそう思った。
次の瞬間、浅田は思いっ切り、前につんのめり、後ろに放り出された。
胸が安全ベルトに締め付けられた。
「あいたー!係長、どうしたんですか!」
思わず叫んでしまった浅田である。
「信号、赤や」
平然と答える大田であった。静かな重い声である。
「そんなの分かってるじゃないですか。怖かったぁ」
浅田は口をとがらせている。
「浅田、今、怖かったか?」
「怖いに決まってるじゃないですか!」
「そうか。怖かったか・・・」
車は再び走り出した。信号はもちろん青に変わっている。
大田は黙ってハンドルを握っていた。
(係長は何を言いたいのだろうか・・・)
浅田はこの沈黙の重さが段々と苦しくなっていた。
「お客さんに、ちゃんとお前、言うたか」
「何をですか?」浅田はまだ口をとがらせている。
「お前、怖かったんやろ」
「当たり前じゃないですか。死ぬかと思いましたよ」
「お客さんは怖くなかったのか?」
「・・・」
浅田の口のとがりがおさまった。
車の走行音が静かにリズムを刻んでいる。
(あなたねぇ〜、私を殺すつもり!)
お客さんの飯田さんの言葉と顔が再び脳裏に浮かんだ。
「あっ!」
小さな吐息が浅田の口から漏れた。
口が開き、目を見開き、右を向いて大田の顔を見る浅田であった。
「さぁ、ぼちぼち、サービスセンターに戻ろか」
かすかに口元を緩めながら、カーブでハンドルを切る大田であった。
(つづく)
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【 小さなあと書きのコーナー 】
どうやら、ビギナー浅田くんの命は助かったようですね。
世の中の会社の主任とか係長とか呼ばれる人は、忙しい人が多いです。
自分の担当業務だけでも多いのに、部下や後輩のめんどうまでみないと
いけない。ついつい、部下、後輩の方はおざなり・・・ということも多く
なってしまいがちです。
そんな中、大田軍曹はじっくりと「気づき」の機会を与えながら、
じっと「気づき」のその時を待ちます。
彼は、人は表面的な頭の理解だけでは、決して、学び得ないことを
知っているのです。そして、それは、ある面、辛抱、辛抱の部下育成なの
です。
さてさて、浅田くん、まだまだ学べるところはあるようです。次は何を
学んでくれるでしょうか。
次回、またご期待ください♪ みなさまのお仕事のお役に立てますように。
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◆ VOL 5
◆ 発行日 2003・12・26
◆ 発行人 オフィス クリアマイン 門脇竜一
◆ 隔週刊 隔週金曜日発行(臨時増刊あり)
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エピソード 1
絶体絶命!訴訟寸前の多重クレーム その5
「自動車販売会社ビギナー 浅田俊介の戦い」
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「あっ!」小さな吐息が浅田の口から漏れた。
口が開き、目を見開き、右を向いて大田の顔を見る浅田であった。
「さぁ、ぼちぼち、サービスセンターに戻ろか」
かすかに口元を緩めながら、カーブでハンドルを切る大田であった。
浅田はようやく気づいた。心の底にあった「自分は悪くない」という
気持ち。お客様にとってはどう映ったのか・・・。
「ぼく・・・お客さんの気持ちを全然考えていませんでした・・・」
浅田はお腹の中から言葉が絞り出される思いであった。
「今、お前が出来うる最大のことは?」
大田はニヤリと笑いながら問いかけた。
「えーと、えーと・・・」浅田はなかなか言葉が出ない。
大田も何も言わない。前方を凝視しながら、ただ車を走らしている。
「!」
「係長!」
浅田は雷に打たれたように大声を発した。
「なんや?」
「早く、この車を直してください。お願いです。お客さんに安心して乗って
もらいたいんです」
「フっフっフ・・・」
「何がおかしいんですか?」
「やっと分かったな。若者よ」
「何がですか?」
「営業マンが売上げ台数を求めるのは分かる。それは仕方のないことや。
でも、会社の上が唱えてる『お客さま満足』をホントに分かって行動していうる
奴はそんなにおらんぞ。お前の先輩連中はほとんどアウトやな。
ただ売ればいいと思っている」
大田はさらに言葉を続けた・・・。
「お客さんのことを理解しようとしないで、いい加減なことを言って、適当な対応
しかしないから、クレームがややこしくこじれるばかりや。
ひどいのは、それはサービスの仕事ですから、あとで取りに来させる・・・やぞ。
この自動車販売という仕事の何たるかを全然分かッとらん!」
大田は憤懣やるかたない表情で述べ立てた。今の浅田には、大田の言っている
ことはよく分かる。
「浅田!」
大田の声が1オクターブ上がった。
「お客さん、かなり怒っておられたか」
「はい、それはもう・・・」
「2日で行けるか」
「何がですか?」
「あほ!お客さんが、待ってくれるかということや」
「は、はい。ぼ、ぼく、お願いして来ます」
「よし、分かった!2日で直したる。お前、ちゃんとお客さんにご理解いただけよ。
頼んだぞ」
「は、はい!頑張ります!」
浅田はこれまでの仕事で感じたことのない気持ちの高揚を感じていた。
「これが、仕事。プロの仕事なのかな」と感じた瞬間であった。
それと同時に、浅田は先輩社員から聞いていたある事を思い出していた。
(軍曹が分かったと言ってくれたら大丈夫!)
まさに今がその瞬間なのだと浅田は知った。
(つづく)
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【 小さなあと書きのコーナー 】
どこの会社でもそうなんですが、仕事のできる人に仕事は集中する。
実はこの大田軍曹も同様で、毎日、仕事は山積です。ところが、この軍曹は
そんな中でも、じっくりと若手を教育します。それも頭ごなしにガミガミ言う
のではなく、気づかせて理解させる〜自分の頭で考えさせる〜、大きな辛抱が
必要な指導スタイルです。
浅田くんの今後のキャリア形成にこの大田軍曹との出会いは、大きな
意味合いを持つことでしょう。
メンター(師匠)と呼べる人に出会える幸せというのを感じさされます。
さて、このエピソード、ハッピーエンドに終わりそうな雰囲気ですが、
そうは問屋は卸しません。浅田くんの心臓、もう一度凍ってもらいます!
詳しくは次号にて。乞うご期待ください!
今年はご購読誠にありがとうございました。良いお年をお迎え
くださいませ。
来年も続々と新ネタが登場!の予定です。お楽しみに♪
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◆ VOL 6
◆ 発行日 2004・01・09
◆ 発行人 オフィス クリアマイン 門脇竜一
◆ 隔週刊 隔週金曜日発行(臨時増刊あり)
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エピソード 1
絶体絶命!訴訟寸前の多重クレーム その6
「自動車販売会社ビギナー 浅田俊介の戦い」
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「これが、仕事。プロの仕事なのかな」
と感じた瞬間であった。
それと同時に、浅田は先輩社員から聞いていたある事を思い出していた。
(軍曹が分かったと言ってくれたら大丈夫!)
まさに今がその瞬間なのだと浅田は知った。
「よかった〜」
浅田は安堵の声を上げていた。
車はちゃんと修理を終えて、浅田の営業所に帰って来た。
さすがプロの仕事である。大田係長はきっちりと仕事を仕上げてくれた。
2日の約束を1日早く上げてくれたのも嬉しかった。
サービスセンターの同期から浅田が聞いた話では、大田は夜遅くまで、
昨日は随分無理をしてくれていたようであった。
「いつ来るの?」
お客様から予想通りというか、丁度、問い合わせが入ったのであるが、
「明日には必ずお届けいたしますので・・・」
と答えることができた浅田であった。
余裕があるというのは素晴らしい。いつものしどろもどろとは
大違いであった。
「お客様にご不便おかけしてすいません。代車はお使いに
なりにくいでしょう」
こんなことも話ができた浅田であった。
「いえいえ、いーのよ。車を直してくれているんだもの。
楽しみに待っているわね。ご苦労様」
えらいものである。お客様の感じも変わって来た。自分の対応が
変わることで、お客様の反応も変わると浅田が知った瞬間であった。
こんなことを積み重ねながら、ビギナーは一人前の営業担当に育って
行くのである。
折から、今日は一日雨である。午後からは雨足が強くなって来た。
久々の雨であった。夕方には止みそうなので、雨がやみ次第、
明日の納車準備をしよう。
浅田は気になる仕事の予定が立った嬉しさと安心感を実感していた。
いつもは、どうしたらよいのか分からないのに、時間に追いまくられて
パニックになってしまっていたのである。
「やっぱりいい仕事はいい段取りからだよな・・・」
と感じる浅田であった。
「浅田、これ持って行っていいよ」
浅田は所長から声をかけられた。
「あっ!それは」
所長が手に持っていたのは、新品のフロアマットであった。
「いいんですか?」
「いいよ。使わなくなったものだから。お客さんのマット、付属品の
ラバーマットだったろ。これで心機一転気持ちよく、今後は乗って
もらいなよ」
「ありがとうございます!」
浅田は嬉しかった。
なんか、みんなでこのクレームの仕事を対応していることの実感が
嬉しかった。
思えば、浅田は自分で勝手に孤独感に陥っていたのかも知れなかった。
「浅田くん、雨上がったわよ」
「ホントだ。小柳さん、今晩はもう降らないですよね」
「ええ、天気予報では晴れると言ってたわ」
「ありがとうっす。今から、明日の納車準備をします」
浅田は営業所の下の車両置き場に向かった。ダッシュであった。
「浅田くん、張り切っているんだわ。がんばれ〜」
小柳は営業所の女性事務スタッフである。浅田の応援団はここにもいた。
(さぁ、さっさと準備して、今日は早く帰ろう〜♪)
浅田は勢いよく、車のバックドアを開けた。
「あっ!」
フロアはぐっしょりと濡れていた。
「雨漏り・・・」
ぼーぜんとその場に立ちすくむ浅田。頭の中は真っ白であった・・・。
(つづく)
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【 小さなあと書きのコーナー 】
オリンピックイヤー 2004年が始まりました。
本年もご愛読ありがとうございます。
ハッピーエンドで終わりかけていた浅田くんのエピソード、とんでもない
事態がまたまた起きました。さて、浅田くん、この苦難を切り抜けることが
できるでしょうか。
年明け早々、「艱難汝を玉にす」ビジネス実践版でのスタートです。
今後の展開をお楽しみに・・・。
大田軍曹、再びの登場近し。こちらもお楽しみに。
本年がみなさまにとって、良いお年になりますように。
他のビジネス軍曹が出番を今か今かと待っております。
順次、登場して行きますね。
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◆ VOL 7
◆ 発行日 2004・02・06
◆ 発行人 オフィス クリアマイン 門脇竜一
◆ 隔週刊 隔週金曜日発行(臨時増刊あり)
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エピソード 1
絶体絶命!訴訟寸前の多重クレーム (最終回)
「自動車販売会社ビギナー 浅田俊介の戦い」
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◎このケースから学ぶ
合計7回にわたってのケース連載、お読みいただきまして、
誠にありがとうございます。
いつまで続くんだぁ?なんて思われた方、最後までお読みいただき、
感謝申し上げます(^^)。
さて、さて、今回はケースのまとめとして、このケースから学ぶ編です。
よくピンチはチャンスとか、クレームはお客さまとのつながりを深める
最大のチャンスなどとよく言われます。
ところが、実際の営業現場では、クレームと聞くと、よくある営業マンの
心理状態は・・・
「勘弁してよ・・・忙しいのに・・・」
「めんどくさいのに・・・」
「嫌だなぁ、文句言われるの・・・」
とまぁ、こんなところです。
浅田くんにしても、クレームを対処しても、目の前の営業目標から
逃れられる訳でもなく、めんどくさい、嫌だ、という気持ちが前面に出て
しまっていたというのが、当初のお客さまの感情をこじらせた原因でした。
お客さまは非常に鋭敏です。
困っている自分に対して、どんな対応をしてくれるのか、この時とばかり、
じっと観察をします。
大田軍曹の指導は、やや荒療治的な部分は含みながらも、お客さまの
「気持ち」にスコープしながら、当社の商品をお買い上げいただいて、
満足にしていただいているはずの「あるべき姿」からのズレを的確に
とらえて、修復を図って行きます。
ぶっきらぼうな大田軍曹は、実は非常に繊細にお客さまの「心」を
とらえることのできるプロだったのでした。
そして、ビジネス軍曹の立場としては、粘り強く本人の「気づき」を
うながす手法をとっていました。ガミガミ頭ごなし一方通行型の指導では
ないところが、浅田くんの深い理解を呼び起こした訳です。
あと、浅田くんがこの体験から学んだこととして・・・
浅田くんはこう語っていました。
「カツ丼にはびっくりしました。最初、大田係長は何を言っているのかと
思ったんです。あとで気づいたんですが、最初からこの修理をするのに、
どれくらい時間がかかるのか、ちゃんと分かっていたんですね。
途中で腹がへるのもお見通しだったんです。腹がへっては戦はできぬ
ですもんね」
ウォームハート&クールヘッド
よくビジネス現場で必要な心構えとして語られることのひとつですが、
危機に際して、冷静に事を判断できるかどうかで仕事の「質」は、決まります。
どんなときでも、冷静さを失わないこと。
浅田くんは、「カツ丼」からそれを学んだのでした。人間いろんなことから
いろんなことを学べるものですネ(^^)。
ちなみに、そのときは浅田くんもカツ丼は食べたそうですが、味は
「全く感じなかった!」
とのことでした(笑)。
さてさて、それから、1年後の後日談・・・営業所でのある風景
血相変えた若者の声!
「先輩、お客さんがこの間納車した車の調子が悪いとえらく怒っているんです!」
今や、かの浅田くんにも後輩ができまして、今や先輩さんです。
さぁ、後輩くんからのSOSです。浅田くん、静かに力強く答えます。
「まずは、心を込めて、嫌な思いをさせて申し訳ございませんとお詫び
するんだ。あとは冷静になって、今お困りの状況をしっかりと聴くこと。
そうすれば、あとは解決に向かう!」
「はい、分かりました!」
後輩くんの表情に赤みが蘇りました。
早速受話器の向かう後輩くんの後姿を見ながら、1年前の自分を思い出して、
ニヤリとしてしまう浅田くんでした。
(このケース 完:次回は新ケース登場!です)
++++++++++++++++++++++++++++++++++
【 小さなあと書きのコーナー 】
ファーストケースが終わりました。ケースの掲載が7回に渡ってしまい
ましたが、最後までお読みいただき有難うございました。
入社してから若手社員と自然に呼ばれる期間の中で、このように心に残る
仕事体験をどれだけできるかで、その方のその後の仕事の「質」レベルが、
ある程度カタチづくられるのではないかと私は確信を持っています。
ビジネス軍曹(=コーチ)の立場で言うと、そのような仕事体験をどのように
させるかが、育成のポイントであり、腕の見せ所でもあります。
あれやこれやと構いすぎてもいけませんが、あんまり放任して戦死されても
困ります(笑)。
ビジネス戦場で生き残るための育成ですから。
『介入』と『辛抱』のバランス
ビジネス軍曹にとっても奥の深い大切なテーマです。
自己研鑽に終わりなしですね。
さて、次回からは新ケースとなります。また、お付き合いいただければ
嬉しく存じます。
先日の節分では、「福は内」の声についつい力が入った私でした。
寒さもますます厳しくなります。
みなさま、お体お気をつけくださいませ。
ではまた、ごきげんようです♪
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☆「会社は教科書のない戦場だ!」に関するお問い合わせ、ご意見などお
待ちいたしております。
また、別途、人材開発、組織活性などのご相談に応じますので、
お気軽にお問い合わせください。
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〔 発行者/連絡先 〕
門 脇 竜 一 (かどわき りゅういち)
TEL:06-6373-2876
〒531‐0071
大阪市北区中津3‐21‐5
URL:http://www.clearmine.com/
e-mail:ryuichi@clearmine.com
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